EQ・音の加工ガイド
イコライザー、周波数帯域、コンプレッサー、フェードについて詳しく解説します。
目次
EQ(イコライザー)とは
EQ(イコライザー)は、音の周波数成分ごとに音量を増幅・減衰させるツールです。特定の周波数帯域を上げたり(ブースト)、下げたり(カット)することで、音のキャラクターをコントロールできます。
録音した音声には様々な問題が混在していることがあります——低音のこもり、中音域の鼻にかかった感じ、高音の刺さり。EQはそれぞれの問題を個別に解決できる強力なツールです。専門知識がなくても、AudioBuffのプリセットを選ぶだけで自動的に最適な設定が適用されます。
フィルタータイプ
EQには複数のフィルタータイプがあり、それぞれ異なる形状で周波数を調整します。AudioBuffでは以下の4タイプを使用しています。
- ピーキング(Peaking)
- 特定の周波数を中心に山形の形状でブースト・カット。最も汎用的なフィルターで、EQバンドの大半がこの形式です。「中音域のこもりを取りたい」「特定の帯域だけ上げたい」場面に適しています。
- ハイシェルフ(High Shelf)
- 設定した周波数以上の音域をまとめて調整します。高音全体の明るさや空気感を一括で増減するのに使います。ボーカルの抜けを出したり、高音のシャリシャリ感を和らげたりするのに効果的です。
- ローシェルフ(Low Shelf)
- 設定した周波数以下の音域をまとめて調整します。低音全体の量感や温かみを一括で増減します。低音が弱い録音に厚みを加えたり、低音のこもりを全体的に引き下げたりするのに使います。
- ハイパスフィルター(High Pass / Low Cut)
- 設定した周波数以下の音をすべてカットします。低音域のノイズ除去に特化したフィルターで、エアコンのうなりやマイクの振動など不要な低音ノイズを除去するのに有効です。
周波数帯域ガイド
人間が聴き取れる音の周波数は約20Hz(超低音)〜20kHz(超高音)の範囲です。各帯域にはそれぞれ異なる特性があり、どこを調整するかで音の印象が大きく変わります。以下の表を参考に、どの帯域を調整するかの判断に役立ててください。
| 帯域名 | 周波数 | 特性と使い方 |
|---|---|---|
| 超低域(Sub) | 20〜60Hz | 体で感じる重低音。声の録音にはほぼ不要で、カットするとすっきりします。音楽のサブウーファー成分を担う帯域。 |
| 低域(Bass) | 60〜250Hz | 低音の量感・温かみ。上げると豊かな低音に、下げるとこもりが取れてクリアになります。楽器やボーカルの土台となる重要な帯域。 |
| 中低域(Low-Mid) | 250〜500Hz | 声・楽器の胴鳴り。上げると温かみが出る一方、過度に上げるとモワッとした濁りの原因に。こもった印象があるときはここをカットするのが定石です。 |
| 中域(Mid) | 500Hz〜2kHz | 声の「芯」になる帯域。鼻にかかった感じ・箱鳴り・電話越しのような音質に影響します。声の存在感を決める最も重要な帯域のひとつ。 |
| 中高域(Presence) | 2k〜4kHz | 声の輪郭・存在感を決める帯域。上げると声が前に出てはっきり聴こえます。一方、上げすぎると聴き疲れの原因になります。 |
| 高域(High) | 4k〜6kHz | 子音の歯切れ・明瞭度に影響します。上げると言葉が聴き取りやすくなりますが、「サシスセソ」の刺さりが気になるときは下げるとなめらかになります。 |
| 超高域(Air) | 6kHz〜 | 空気感・煌めき・ハイハットの輝き。上げると明るく伸びやかな印象に。ボーカルやアコースティック楽器の録音で「ふわっとした空気感」を出したいときに有効です。 |
ハイパスフィルター(低音カット)
ハイパスフィルター(High Pass Filter)は、設定した周波数以下の音をすべてカットするフィルターです。「低音カット」「ローカット」とも呼ばれます。高い周波数(High)だけを通す(Pass)ので、ハイパスという名前です。
声の録音では、エアコンのうなり・換気扇の音・マイクの振動・衣擦れなど、低音域に潜む不要なノイズを除去するのに非常に効果的です。80Hz前後でかけておくと、音を自然に保ちながらノイズだけを取り除けます。楽曲の場合はキックドラムやベースの基音に影響するため、より低い値(40〜60Hz)で設定するのが一般的です。
AudioBuffでは40〜250Hzの範囲でカット周波数を選べます。ポッドキャスト・ナレーションには80〜120Hz、楽曲には40〜60Hzが目安です。
コンプレッサー(音量のばらつきを整える)
コンプレッサーは、音量のダイナミクス(大きさのばらつき)を自動で整えるツールです。設定したしきい値(スレッショルド)を超えた大きな音を自動的に圧縮し、音量差を小さくします。
話し声では「大きく話しているとき」と「小さく話しているとき」の音量差が激しいことがあります。コンプレッサーを使うとこの差が縮まり、全体的に聴きやすい音量になります。ポッドキャストや動画ナレーションに特に有効です。
音楽の場合は慎重な使用が必要です。過度にかけると音の強弱(ダイナミクス)が失われ、のっぺりとした感情表現のない音になります。AudioBuffのコンプレッサーは声向けに最適化されたナチュラルな設定です。
無音を詰める(ポッドキャスト向け)
ポッドキャストや音声収録では、収録中に生まれる長い無音——言い直しの間、次の話題への切り替え、機材の準備待ちなど——がそのまま残ることがあります。「無音を詰める」機能は、こうした2秒以上の無音区間を自動で検出して短縮します。
ただし完全にカットするわけではなく、前後に500msの余白を残します。これにより「間」の自然さを保ちながら、テンポよく聴けるコンテンツに仕上げることができます。また、カット点に短いフェードを自動適用するため、プツッとしたクリックノイズが入ることもありません。
短い息継ぎや語間の間(2秒未満)はそのまま残ります。会話の自然なリズムを壊さないよう、除去対象は意図的に長い無音のみに絞っています。
フェードイン・フェードアウト
フェードイン・フェードアウトは、音声の始まりや終わりを滑らかにするエフェクトです。プロの仕上がりに欠かせない基本テクニックのひとつです。
- フェードイン
- 無音から徐々に音量が上がります。プツッとした唐突な始まりを防ぎ、自然な印象を与えます。0.5〜1秒の短いフェードでも十分効果があります。
- フェードアウト
- 徐々に音量が下がって無音になります。ブツ切れ感がなく、きれいに終わります。楽曲のエンディングには2〜5秒の長めのフェードアウトが一般的です。
AudioBuffでは0〜5秒の範囲でフェード時間を設定できます。迷ったら0.5秒から試してみてください。